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民事信託と任意後見契約

任意後見契約は、元気なうちに認知症時に備え、あらかじめ自分の財産管理や身上監護を信頼できるひとへ一括して任せる契約です。

この契約の効力は、ご本人の判断が衰えてきたときに発生します。

一方信託契約は、元気なうちに特定の財産について、信頼できる人に運用を任せる契約です。

契約締結時に効力が発生します。

似ているようですが、これらの制度は大きく違います。

任意後見契約は、自分自身の財産全ての管理・運用・処分について、一括して任せることができます。
しかし、任意後見監督人の監督を受け、財産管理・運用処分について、報告を求められることになります。

任意後見監督人が納得のいかない処分であると判断すれば、指示や是正勧告を受けることもあるので、信託契約の内容に沿って処分運用できる信託契約ほどの自由度はありません。

任意後見契約においては、施設入所契約や介護契約の締結などの事務(身上監護)をすることができます。
これは、一定の目的のために信託財産の管理・処分を行う信託契約では代替することができません。

民事信託と任意後見の併用について具体的な事例をもとに、メリット・デメリットを挙げていきます。

併用事例
相談者(60)は、妻はすでに他界していて、息子が3名です。

相談者に兄弟が4人いて、兄弟には子供がいない姉が1名います。

主な財産は、自宅・預金・投資信託・賃貸マンションです。

認知症対策をしておきたい
このまま賃貸マンションで老後の生計を立てていきたいが、相続税の対策もしたい・・・
自宅はできれば処分したくないが、生活費に困ったら処分してほしい
遺産の承継については、話し合って決めてほしい
これらが、主な希望です。

〈何も対策をしない場合〉

認知症が進むと、賃貸マンションの管理ができなくなります。

親族が代わりに経営にかかわる契約等の締結を勝手に行うことは違法ですので、成年後見人制度を利用し、相談者の代理人を家庭裁判所に選任してもらうことになります。

ただ、成年後見人制度を活用するまで通常2~5カ月ほどかかるといわれていますので、その間、マンション経営は滞ることになります。

成年後見人選任後は、賃貸マンションの経営は可能になりますが、成年後見人は本人の財産を守ることが大きな使命ですので、大規模な修繕や建て替え、この方法でもアパート経営は長期的には厳しくなってきます。

相続税対策を見越した売却等も難しいです。

また、自宅についても、成年後見人による管理が必要となります。

〈民事信託・任意後見契約併用〉

民事信託契約⇒賃貸マンションの管理運営

任意後見契約⇒兄弟の相続が開始した時の遺産分割協議の代理人

自宅の修繕、必要が生じたときの売却

その他の預金・投資信託・年金・相続財産の管理

メリットは?
主要な財産の管理を「民事信託(家族信託)」で、

信託財産に入れなかった主要ではない財産の管理や身の回りの世話などの身上監護は「任意後見」で担う

というスキームはとても堅実であると思います。

今回のケースにおいて、賃貸マンションを信託財産とし、その他の財産は全て任意後見契約で管理することになります。

賃貸マンションを信託財産としたのは「認知症対策をしたい」という希望からです。

認知症になってしますと、資産が凍結します。

賃貸マンションについては、任意後見契約だけでは、事実上、代理人のみで対応することができないため、柔軟な信託契約を利用します。

また、子供のいない兄弟がいるので、近い将来相続が発生した場合遺産分割協議が必要です。

認知症の場合、本人は遺産分割協議ができません。

信託契約でも遺産分割協議を代理することができないので、任意後見契約が必要です。

自宅については、信託財産としてもよいですが、売却・運用の意思があまりないので、認知症後にいざという時に任意後見人が売却の手続きが踏めるよう任意後見契約で担います。

特定の相続人へ、財産を渡したいのではなく、「みんなで話し合って分けてほしい」という意向から、その他の財産についても、信託財産とはしませんでした。

このように、どのような制度を当てはめるかはケースバイケースです。

それぞれのケースによって、スキーム内容は全く違います。

民事信託(家族信託)だけで補える場合、任意後見も併用して将来に備える場合、どうすべきかはそれぞれの形態に応じて判断しなければなりません。

デメリットは?
任意後見を併用した場合のデメリットは、あまり想定できません。

将来に備えて、対策をしておくことはとても重要です。

しかし、任意後見を併用することで、その分の費用負担が大きくなります。

また、後見人になる方の事務負担(定期報告等)や、財産処分への一定の制約があります。

そのことも十分理解したうえで、どの制度を利用するのか考える必要があります。

民事信託(家族信託)について、他にもコラムを多数掲載しております。

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